黒死館殺人事件(小栗虫太郎)

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    JUGEMテーマ:ミステリ

    ※ネタバレあります。
     何度目かの挑戦でやっと完読。三大奇書の中では一番短いが最も難解。読み始めて新本格派第一世代を思い出し、彼らはこういう作品に啓発されて一派を形作ったのかも…と思ったが、読み進むにつれ新本格派第一世代が紛い物に思えてきた。それくらい華麗なペダンチックさ。あまりの華麗さに眩暈を覚え、以後その眩暈から逃れられないままラストまで。読了した今も眩暈に悩んでいる。

     何回か読まないと掴みきれない作品。だからといっても再度読む気には…ならんな。複雑に入り組んだ話でも動機は俗な欲にあるというのが大概のミステリーだけど、この作品は、犯人の伸子に「欲」らしいものが見当たらず当惑した。が、最後に伸子が算哲の子どもだったことが明かされて了解。しかし、トリックといい犯人の動機といい推理ゲームじゃないよね、この小説は。

     

     雑誌連載が昭和9年。当時、この本をどれだけの人が理解しながら読んだのかにも興味がある。
    私が読んだのは社会思想社の文庫本だが、巻末に井上良夫と島田太郎による感想文が載っている。仮にこの本を再読するとしたら、次は島田太郎の感想文を読んでから本編に取り組んだほうが若干の予備知識が身に付いての読書になり良いように思う。井上良夫の感想はダメ出し感が強い。(ダメ出しの内容には私も同意だが…)


     これで日本ミステリ―三大奇書を完読。その満足感だけはある。

     

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    海の見える理髪店(荻原浩)

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      JUGEMテーマ:日本文学

       表題作は初めから注意して読んでいればオチは予想できただろうが(なぜこんな理髪店まで来た? 店主には別れた妻と子供がいる?等)、床屋へ久しく行ってない身としては、描かれる散髪の過程に以前通っていた理髪店を思い出し、自分が散髪してもらっている気分で気持ちよく読み進めたために全然気づかなかった。文章が気持ち良くて、ほぼ散髪してもらったような読後感。「いつか来た道」は家族に同じ病気の者がいるので早い段階で展開は読めた。一種の「あるある感」だね。「遠くからの手紙」は戦争で亡くなった祖父が祖母に出していた手紙が孫娘の携帯にメールとなって送られてくるって、ホラーか。「空は今日もスカイ」ただただ切ない。フォレストが救われますように。「時のない時計」は最後の3〜4ページの展開が急。短編だから仕方ないが、物語の仕舞いを急いだ感が強い。「成人式」は面白さではこれが一番だった。5年前に亡くなった娘の代わりに親が成人式に「出席」するっていうんだから。5年間喪失感から抜け出せなかったのに成人式出席計画を進めるにつれワクワク感すら覚えるようになる夫婦。成人式当日には亡き娘の友人たちにも助けられ何とか計画成功。ハッピーな読後感。
       全体を通しての感想だが、読者を選ぶ短編集だと思う。ある程度、家族を「体験している」読者。そんな人間にとっては心に沁みる話ばかりだろう。

       

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      暗約領域(大沢在昌)

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         図書館本。新宿鮫シリーズの主人公は鮫島だが、各話に出てくる物語を背負った犯罪者がそのお話での主人公。今作にもそういう人物が何人か出てくるが、それぞれの背負っている物語の大小(強弱)が曖昧なために、各人の物語を消化しきれていない。シリーズ2作目のタイトルにもなっている「毒猿」のような際立たせ方がなかった。

         新しい課長も、信念の強さはわかるが、鮫島の信念との対立の描き方が不十分なまま何となく同化してしまったように思えた。同じく新登場の若手刑事も、彼の本来の目的が明らかになった後は簡単に鮫島サイドと同化してしまう。期待を持たせたマリカもインパクトが弱かったし、全体的に中途半端な印象。前作から8年。著者に粘りが無くなったのか…。
         あと、殺し屋「死神」の「ユンヨンチョル」の名は実際にあったソウル20人連続殺人事件の犯人「ユ・ヨンチョル」から取ったのかな。

         

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        絆回廊(大沢在昌)

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          ※ネタバレあります。
           図書館本。8年ぶりに出た新宿鮫シリーズの長編新作「暗約領域」に前作「絆回廊」の登場人物が出てくるというので、その記憶確認のため再読したが、記憶確認どころか全然話を覚えていなかったため初読感覚で楽しめた。終盤畳みかけるスピード感はさすが。特に今回は物語通してキーとなる人物の逮捕という大きな山場(ここで桃井が死ぬ)の後に、鮫島殺害という別の山場まで用意されており、著者のストーリーテラーとしての腕を再認識した。またその鮫島殺害の場面に変な人物が絡んでくるところも「おー、ここで出してくるか…」という感じ。正直、初読の時にこれほど好印象を持ったのならもっと記憶に残ってたと思うんだけど、そうじゃないのでそれほど良い作品だとは思わなかったんだろうね。どうしてだろう。今回は京極堂シリーズの後だったのでスラスラ読めたからかな。とにかく、これで新作読むのが楽しみになった。

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          孤島の鬼(江戸川乱歩)

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            ※現代では不適切な用語がありますが、作品の雰囲気を伝えるために使っています。

             この本を読もうと思ったのは、NHK-BSの「深読み読書会」でこの作品が取り上げられたのがきっかけ。ところが、「深読み読書会」を録画していたHDが壊れちゃって視聴不能になってしまった。本を読んだ後に答え合わせ的に見ようと思っていたので、本読みのモチベーションが下がってしまい積読状態が続いていた。それをようやく手に取ってみたけど、いやあ、素晴らしい小説だった。
            主人公の恋人が殺され、捜査を依頼した探偵も殺される。密室殺人と衆人環視の中での殺人。暗号もある。これだけでミステリの要素満載なのに、傴僂男、シャム双生児、小人といった不具者の登場もあれば同性愛の要素もあり、これぞ江戸川乱歩! という作品。明智小五郎メインで乱歩作品を読んできたけど、非明智作品でこんな傑作があったとは。確かにトリックは現代だと疑問を感じるが、「江戸川乱歩」を、そして「江戸川乱歩という時代」を楽しむには最適の作品だと思う。

             

            以下余談。
            作中では「せむし」が「傴僂」と書かれているが、パソコンで「せむし」と入力しても「せ」と「むし」を分けた表示で出てくる(「セ無視」等)。そこで、「せ」と「むし」をくっつけて「せむし」にして再度変換すると「せむし」か「セムシ」しか出てこない。
            また、「不具者」も「ふぐしゃ」と入力したのでは「フグ者」のように「ふぐ」と「しゃ」が分けて表示される。そこで、「フグシャ」と、くっつけて再度変換すると「せむし」同様にひらがな表示かカタカナ表示しか出てこない。それではと、「ふぐ」だけで入力してみたら「ふぐ」か「フグ」か「河豚」しか出てこない。結局「ふぐあい」と入力して出てきた「不具合」から「合」を取り、それに「者」をくっつけて「不具者」にしたのだが、こういうのも言葉のコンプライアンスの関係で表示しなくなってるんだろうか。ちなみに「片輪」も「かたわ」では出てこない。わざわざ単語登録してまで使おうとは思わないのでこのままにしておくが、昔の小説を読んだ感想を書こうとすると、今はちょっとした配慮が必要になっているのかなと思った次第。

             なんか、余談の方が長くなっちゃったな。

             

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